3度目の講習会でトランス状態に陥った私の心に、わの中心に存在する「絶対的服従を誓う意識」が流れ込んできた。
しかし、そのトランス状態を脱し、正氣を取り戻したとき、たった今起きた不可解な出来事を、私は覚えていなかった・・・。
数日後――。
私は、家のソファーで仰向けになり、スマホを操作していた。
と、そのとき、突然、そのトランス状態に陥っている状態の自分が脳裏を駆け巡り、私は予期せず事態に動揺した。
ツインの記憶が降りて来たとき と同様に、そのときの自分が鮮明にリアルに蘇る――。
「私は絶対的に、極限まで命を掛けて服従し、この身を捧げます」
生まれて一度も抱いたことのない、強烈な絶対的服従を誓う意識――。
それからしばらく、その意識が、来る日も来る日も私の胸をよぎった・・・。
そんな折、私の頭に突如、次の疑問が浮かんできた。
・・・そうか、あの会場のわの中心には「絶対的に服従する」という意識が存在してるんだ。だけどそれは、参加者たちの集合意識だろうか?
そう疑問を抱いたとき、今度は、次の場面が連続して、走馬灯のように脳裏を駆け巡った。
千葉さんは、「部屋の空間」を操作することができると語っていた。
なおかつ、スピーチしながら、しきりに意識を「わの中心」に向けるよう指導していた。
加えて、講習会最後の「中心で行うルーティン」の後、千葉さんに出会えたことに感極まり、涙を流している人を複数人見かけた。
・・・そうか、あの意識は千葉さんが意図的に仕組んでいるんだ。だけどなんのために?
私の中ではまだ、彼は尊敬に値する人物であり、彼の存在そのものがまさしく絶対的だ――。
千葉さんは、これまで出会った人の中で突出して、誰よりも穏やかな口調で話す人だった。
そして彼自身、「今まで怒ったことがない」と豪語していた(この時点でどうかと思うが…)。
しかし。
自分の思惑通りにならなかったとき、カッとなって参加者に八つ当たりする彼を、数回目撃したことがある。
さらに、一目置かれている彼の側近から、侮辱的な態度を露わにされたのは1度だけではなかった・・・等々、脳裏をかすめた「負の場面」は他にもあるが、このくらいにしておこう。
そうして私はこう悟った。
「そうか!! 彼は尊敬に値する人じゃない!!」
「それどころか、会場の空間を操作して、参加者に絶対的服従を強いるよう仕向けている!!」
「マインドコントロールだ!!」
「そうか!! だからわの中心に意識を向けさせるんだ!!」
続けて、講習会にはじめて参加した日のトラブルが、鮮明に頭に蘇った。
「そうか!! だからあんな重大なNOサインが出たんだ!!」
はじめて彼を見たとき、発しているのは眩しいオーラではないと感じた。
そしてそれを、私ははじめてこう理解できた。
「彼は曇っている!!」
「彼はダークグレーのもやに包まれている!!」――。
つづく