電話が鳴って発信者を見ると、知恵と共通の友達の佐代子だった。
私は一瞬、胸騒ぎがした。
次いで「もしもし」と電話に出た途端、佐代子が取り乱し氣味にこう発した。
「知恵の旦那が亡くなった!!」
私は頭が真っ白になり、そして焦った。
知恵とは、ひどく打ちのめされて絶縁したはずのに、氣持ちが先走った私は、はやく彼女のもとへ駆け付けようとしたのだった・・・。
情とは、私たちが想像する以上に複雑なものかもしれない。
佐代子は続けて、お通夜が営まれる式場を私に伝えようとした。
と、その途端。
たった今まで耳にしていた佐代子の声がいきなり途絶え、通話不可能になった。
何度「もしもし?」と言っても、一切音が返ってこない。
私は電話を切り、繰り返し何度も掛け直したが、今度は一貫して通話中状態だ。
きっと佐代子も、同時に掛け直しているのだろう。
そこで私は、佐代子からの電話を待つことにした。
すると、すぐに彼女から着信が入った。
次いでお互い「ごめんごめん」と言い合い、再度式場の場所を聞こうとしたそのとき。
またもたや不通になり、「もしもし?」と繰り返しては電話を切り、再度お互い掛け直し合った・・・。
結果的に、そんなことを4~5回繰り返すことになった。
その間、私の心は、訃報を知ったときの焦りが次第に消え失せ、頭の中では、冷静な判断力が回復しつつあった。
つまり、電話を掛け直したり、佐代子から掛かってきたりする間、お通夜への参列をどうするか、落ち着いて検討できるようになったのだ。
そうして私は、最終的に、お通夜への参列を「やめよう」と決断した。
すると次の瞬間、それまでのトラブルが嘘のように 、通話の不具合が一切発生しなくなったのだ(今の私は、このときの不具合を、お通夜へ参列することへのNOサインだったと推測している)。
こうして、やっとスムーズな会話が可能となり、私は佐代子に、知恵と絶縁したことを端的に打ち明けた。
佐代子は、知恵と私の3人で、一緒に同窓会に参加した仲だ。
知恵のことで悩んでいたとき、私たちのいざこざを佐代子が知ったら、どんなに残念に思うだろうと、相談できずにいたのだった・・・。
知恵と、亡くなった旦那さん「弘毅(こうき)君(仮名)」は、知恵が大学で一番仲が良かった友達から弘毅君を略奪する、という形で結ばれた。
当時の知恵は、当然相当悩んでいた。
そのときの私は、「知恵は、弘毅君をどうしようもなく深く愛している」という認識で、略奪することを、「弘毅君が知恵を好きになったのなら仕方がないこと」とし、彼女をまったく咎めなかった・・・。
今――。
あのときの知恵の、弘毅君に対する恋愛感情を、私は「深く愛していた」とは認識していない。
今の私は、2015年当時、私がツインレイに執着していたときと、まったく同じ感情だったと認識している。
すなわち、知恵と弘毅君はツインレイカップルだと。
知恵の魂が、もっとも成長できる相手として、弘毅君に執着していたのだと。
それを、後の 2016年に起きる不思議体験 で悟ることになるのだが・・・。
佐代子の話では、弘毅君はここ2ヶ月ほど、病院で闘病生活を送っていたとのことだった。
その日の夜、私は寝付けずに、
ベッドの中で泣いた――。
つづく