2022年8月――。
ツインの真の概念が降りてきて 6年。
つまり、染矢先生への執着が取れて6年の月日が流れたことになる。
私は、彼への執着が取れた途端、「ツイン」という世界観そのものに興味を失ってしまい、真の概念を前田くんに伝えようとか、世間と共有しようとか、そんなことにはもう、固執しなくなっていた。
それに連動して、前田くんのHPを訪れることもなくなり、あんなにツインに時間を費やした日々が、夢で起きた出来事のようになっていたのだ。
それから。
私は無職になっていた。
転職のタイミングでコロナ禍になり、履歴書を送った4社すべてが不採用・・・。
「これからどうしようか、、、」
そう途方に暮れていたとき、ふっと前田くんのことが頭に浮かんだ。
「前田くん元氣かな…?そういえば、ツインに対して今、どんな風に思ってるんだろう…」
久しぶりに彼のHPを訪れると、更新が途絶え、ツイン関連の記事がすべて削除されている。
前田くんも、ツインへの捉え方に変化があったのかもしれない。
私は意を決して、彼にメールを送った。
それは、約6年ぶりのメールだったのにもかかわらず、自分でも驚くほどに迷いがなかった。
最初のメールは、当たり障りのない、元氣かどうかだけを尋ねるような内容だった。
すると次の日、さっそく前田くんから返信が届いた。
彼からのメールもまた、それに返答するだけのシンプルなものだった。
そのメールを受け取った夕方――。
私は、窓外を眺めながら、「ツインの真の概念」について思考を巡らせていた。
「前田くんに伝えてみようかな…。だけど、もし伝えるとしたらどうやって伝えようか…」
そう思い悩んでいたとき、夕日が射す雨上がりのキラキラした情景に、うっすらと光り輝くなにかが現れ、それがゆっくりと7色の色彩を放ちはじめた。
次いで、最初は垂直に立っているように見えたそれが、再びゆっくりと、今度はアーチ状の形へと変貌を遂げたのだ。
私はその、「半円にかかった見事な虹」が完成するまでのプロセスを目の当たりにして、これはGOサインだと、前田くんに真の概念を伝える重大な義務を私は担っているのだと、奮い立ったのだった――。
つづく