これまで、私が憧憬の念を抱いていた「千明さん」は、実際会ってみると不遜な人だった(悪口ではなくて客観的事実です)――。
肝心の「守護霊からのメッセージ」だが、彼女はチャネリングし終わると、モジモジしながら目を泳がせ、蚊の鳴くような声でなにやら囁いた。
・・・と言うより、そのチャネリングのプロセスや降ろしたメッセージの内容は、不思議なほど私の記憶から抜け落ちている。
それくらい、取るに足らないセッションだった。
次いで彼女は、不安げな顔で、
「こんなんで1万円!?とかって思わないでくださいね~」
とだけ付け加えた。
そのときは私も、
「そんなこと思わないですよ~」
などと調子を合わせたが、こわばった顔のまま領収書を切る千明さんを眺めながら、ツインソウルについても質問しようと意氣込んでいたきのうまでの私は、既にどこかへ消えてしまっていた・・・。
1万円を受け取った彼女は、冷めたポテトを指で私の方へはじき、そして顎で使うようにして食べるよう勧めた。
軽く断ると、続けて、次の日のワークショップと、その後の懇親会に参加しないかと私を誘うのだった。
当初私は、それらに参加する氣などまったくなかった。
しかし、千明さんに、「(懇親会での態度が)みんなすごいよ~」としたり顔で誘われ、さらにNOと言えない私の性格がわざわいし、結局、その両方に参加することになってしまった。
私の心がもっとも悔しさで満ち溢れたのは、その、懇親会の場だった。
その会合は、ワークショップが行われたホールのオーナーをはじめ、以前から千明さんと懇意にしている人ばかりが十数名ほど参加していた。
そこで彼女は、まるで神様のように祭り上げられていたのだ。
それは、「尊敬」という意味合いをとうに超越し、「崇拝」という域にまで達している。
遅れてきた人は、まず千明さんのもとへ向かい、お土産を「捧げ」、なんと、三つ指をついて挨拶をしていた。
私は、前日彼女が発した「みんなすごいよ」という言葉の意味をようやく理解できた。
そしてそんな光景を目の当たりにして、疑惑だらけの個人セッションを終えたばかりの私は、虚しさだけが心で空回りしていた。
こんなひどい虚無感を感じたのは、生まれてはじめてだった・・・。
ちなみに千明さんは、スピリチュアルにまつわる書籍を上梓し、レビューで高評価を得ている――。
つづく