ツインソウルについて調べていた2013年――。
突然、半年間に渡って、高校3年生のときの記憶が「降りてきた」。
最初は、それを回想しているのは私自身だと考えていた。
しかし、その記憶のターゲットは、明らかに化学の「染矢先生(仮名)」だった。
彼は担任ではなかったが、学校一厳しくて、笑った顔を決して見せない、全生徒が恐れる「名物教師」だ。
そんな彼との二十数年前の出来事が、まるできのう起きたことのように蘇る。
それほどに、鮮明でリアルな現象だった。
その半年間、私は、氣持ちだけ高校3年生のときにタイムスリップしたような状態で過ごすのだが・・・。
あるとき、自分がその記憶を回想しているのではないと氣付いた私は、じゃあ、「染矢先生」が具体的になにを意味しているのか、とくと考えるようになった。
そのときには既に、ツインソウルについての知識は完璧であったし、「ツインソウルと出会ってみたい」という願望もまた健在だ。
しかしこの時点で、これまでリサーチしてきた「神聖なツインソウル」と、「学校一厳しい染矢先生」は、地球がひっくり返ってもまったくもって繋がらない。
それでも、「もしかして染矢先生がツインソウル…?」という、一抹の思考が巡るようになり、次いで理性で「まさか」と拒否すると、彼との記憶がこれでもかと言わんばかりに頭をもたげた。
それはまるで、彼をツインソウルと認めるまで、第3者に強制的に、彼の映像を幾度も繰り返し脳裏に再生されているかのようだった。
そんなことを繰り返すうちに、「染矢先生がツインソウル…」という肯定的な思いが漸進的に拡大し、そして完全にそう受け入れた途端、彼と共有した記憶はもう、2度と私に降りてくることはなかった。
私は愕然とした。
染矢先生が、これまで夢中になって調べてきたツインソウル・・・。
あの、高校3年生の1年間、私は一体なにをやっていたんだろう・・・。
当時、そんなこととは別世界に生きていた自分を、私は自責するように悔やんだ――。
その直後、今度は涙が止まらなくなった。
そしてそれは、これまで経験したことのない大号泣だった。
それはまるで、それまでの人生で暗黙のうちに溜まった魂の傷を、根こそぎ浄化しているようなありさまだった。
ただ奇妙なことに、大号泣しながらも、この状態がいつまで続くのかという疑問を、私は心の中で淡々と巡らせていた・・・。
大号泣が2週間ほど続いてから――。
今度はまるで、天国にいるような精神状態になった。
魂が喜悦したのだ。
染矢先生のことを思うと、いや、彼のことを思わなくても、四六時中魂がときめき、見るものすべてが美しく、過去に受けたどんな仕打ちも、全部許せた。
そんな、言葉では言い表せない程の「極上の幸福感」、この世のものとは思えない程の「バラ色の精神状態」が、1ヵ月ほど続いた。
まあ、欲を言えば、もっと続いて欲しかったのだが・・・。
ただ、その後が地獄だった。
彼にどうしようもなく執着してしまったのだ。
彼は、16歳年上で既に結婚しており、子供が3人いる。
しかし、そんなことはお構いなしに、救いようがないほどに会いたかった。
是が非でも仲を進展させたかった。
彼とは当然、高校を卒業して20年以上、一度も会っていない。
染矢先生のことならどんな些細な情報でもキャッチしたくて、毎日名前を検索しまくった。
さらに、暇さえあれば、「ツインソウルの攻略法」をリサーチしまくった。
むろん、彼に再会した後、ツインソウルの概念をどう説明するかまで、何度もシミュレーションするのだった――。
つづく