染矢先生への伝言 NO.4 ~ツインレイ体験記㊷~

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3月2日、卒業式。

式典は、私たち卒業生が、担任教師に1人ずつ名前を呼ばれて起立し、代表生徒1名が、卒業証書を受け取る運びだった。

3年生の担任だった染矢先生もまた、マイクの前に立ち、学級の生徒の名前を1人ずつ呼んだ。

私は、そんな彼を見つめながら、掛かってきた電話のことを回想していた。

「あの電話はなんだったんだろう・・・」

そして少し痩せたように見えた彼を、

「染矢先生ってかっこよかったんだな…。なのに(あんなに怖くて)もったいないな…」

などと、悠長に惜しんでいたのだった――。

それが、高校で彼の姿を目にした最後の場面だ。

きのうのことのように蘇った「彼と共有した時間」の最後の場面だ――。


私は、「降りてきた記憶」の中に1つだけ、後悔してもしきれない自分の言動がある。

2学期の化学の時間、同じ班のクラスメイトと、おしゃべりしながら実験していたときのこと――。

話題は、私がそのとき通っていた自動車学校のことで、私は、近く受験する仮免許の試験について語っていた。

すると隣の子が、その試験をいつ受けるのか尋ねてきた。

仮免許試験は、半日以上の時間を費やすので、学校を休んで受験しなくてはならない。

当時、染矢先生に嫌われていると信じて疑わなかった私は、堂々と、「化学の日に合わせて受ける」と答えた。

「化学がある日に学校を休みたい」という意味だ。

私の席は一番前で、しかも彼がいた教壇の真ん前だった。

つまり、彼に聞こえるであろう前提で、私はそう言い放ったのだ。

「若氣の至り」では済まされない。

人として最低だった。

これが、今でも私の胸を締め付ける、後悔ばかりが募る苦いシーンだ――。


20代の半ば、友達から、染矢先生の噂を耳にしたことがある。

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彼は、私たちの卒業後、生徒に対して優しくなったのだそうだ。

彼女の職場の新人に同窓生がいたらしく、「染矢先生は優しくて生徒に慕われていた」と聞いたらしかった。

そのときの私は、それを話題の1つとしてしか関心を寄せなかったが、今、そんな彼を想うと、私の魂が柔らかな光でふんわりと包まれる。

彼はあの後、心を開き、本心で生徒と接するようになったのだ。


彼は、魂を解放したのだ――。



私は時空を超えて、染矢先生に熱烈に恋をした。

そして今。

ソウルメイトの前田くんの言葉を借りるならば、

「私は今でも彼を愛している。しかしそれは、自分を愛するように彼を愛している、という意味だ」――。

私と染矢先生の間には、常に物理的な距離が存在する。

しかし彼は、いつも私の魂にいる。

それが彼のいる場所、

ツインレイのいる場所だ。


おわり
※次ページに「あとがき」を記載しています。

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